ドイツの犬の保護に関する法律

Deutschland1日本の家庭犬の現状

 もはや、ペット大国になった日本の飼い犬は677万頭(2010年度末 厚生労働省調べ)約20人に1頭の割合で犬が飼われているといわれています。また、犬の累計流通数は、年間約60万頭ともいわれています。しかし、その背景では、年間殺処分された犬の数、28,569頭(2013年 環境省)。また売れ残った犬たちをペット業者が、遺棄した数は、年間約14,000頭といわれています。

 犬の咬みつき事故に関しては、年間4,383件(2010年 環境省)。また、身勝手な行為を行う飼い主(犬ハラスメント)が増え、犬が苦手な人たちへの迷惑行為(児童公園などでのマナー違反)などで、社会問題になっているのが現状です。しかし、これらの問題は犬たちが原因でしょうか?

犬の先進国ドイツでは・・・ 

 200年前のドイツに動物愛護の父、アルバート・クナップ牧師(1798~1864)が、「動物は人間の所有物ではない。人間と同じ痛みを感じる存在である。」と唱え、捨てられたり、虐待されたりしている動物たちを保護する施設をつくりました。この活動が、ドイツ各地に広がり、「動物は社会に欠かせない一員だ」そんな考えが、ドイツ市民に根付き、1974年には、犬の保護に関する規則が、条例で細かく定められました。そして、2002年には、憲法にも動物保護が書き込められました。
 「国は来るべき世代に対する責任を果たすためにも・・・自然的生活基盤及び動物を保護する」

ドイツ連邦共和国基本法  第20a条

 犬の殺処分も正当な理由でないかぎり禁止されています。飼い主の手に負えないのであれば、社会が動物たちの命を守ります。犬は人間にとって大切なパートナーだとドイツ国民は考えます。

 犬や猫を殺すにはまず獣医学的所見という正当な理由が必要です。現実的な例を挙げると、保護施設に収容された犬や猫を一人の獣医師が不治の病と診断のうえ安楽死を決定したとすると、安楽死させられた犬や猫の死体は大学の病理検査に送られ、そこで安楽死を決定した獣医師と同じ病理結果を得られなければ正統な理由なく動物を殺したということで起訴の対象となります。また例え不治の病だとしても酷い痛みを伴わず投薬など治療を継続することで生活に支障がないとされる動物は安楽死の対象にはなりません。また収容日数によって殺されることも決してありません。別の例では「人を噛む凶暴な犬」という理由で殺処分を要求された犬には、犬の行動療法の専門家の見解をも要求され、その場ですぐに殺されるということがありません。噛み癖のある犬の背景を専門家が見て、それが軌道修正可能なものかどうかを判断し、修正可能な犬の行動ならば殺さず時間をかけてでもリハビリしてその犬に普通の犬の暮らしを与えることができるように試みます。それでも、やむを得ず動物を殺す際は必ず安楽死でなくてはなりません。現在ドイツの動物保護法から読み取ると安楽死とは「痛みと苦しみを伴わない死」のことであり、家畜の堵殺のみならず犬の場合も麻酔薬を用い、痛みと苦しみを回避することでのみ殺すことが許されているのです。

 ドイツの犬の保護に関する法律のほんの一例 

飼育について

  • 犬の大きさや犬種によって、ケージやサークルの大きさも詳細に定められている。
  • 犬を一人ぼっちにして、長時間留守番させてはいけない。
  • 外の気温が、21℃を超える場合は、車内に犬を置き去りにしてはいけない。
  •  1日最低2回、計3時間以上、屋外 (運動や社会性を身につける)やドックラン (主に社交性を身につけるため)へ連れていかなければいけない。
    ※ これらの法律を違反していると、市民からの通報があり、獣医局やアニマルポリスから指導を受けます。そして 違反が続くと罰則があり、正しい飼い方ができないと判断されれば、強制的に犬たちが没収され、施設で保護されます。

ブリーダー (繁殖者)について  

  • 生後8週間未満の子犬は母犬から離してはいけない。  (第2条  第4項)
  • 犬の繁殖業者は繁殖に使う成犬10頭までとその子犬しか持ってはいけない。
    そして業者はその教育と知識を身につけていることを役所に証明しなければならない。 (第3条)
  • 生後12ケ月までの犬は鎖に繋いで飼ってはいけない。  (第7集第7項1)
  • 授乳中の母犬、病気の犬は鎖に繋いではならない。 (第7条第7項2~4)
  • 屋外で飼育する場合は、雨風がしのげ、室温を確保できる保護壁と断熱材を使用し、健康を害することのない素材で作った犬舎であること。
  • 鎖の付け根は固定せずに、最低でも6m以上のレールに取り付けて、自由に動けるようにしなくてはならない。(第7条第2項1)
  • 室内で飼育する場合は、昼夜のリズムが守れるよう採光のための窓の大きさ (室内面積の8分の1)なども決められている。
  • 犬の暮らしに必要な最低面積も犬の大きさや犬種によって、詳細に定められている。
    ※  これらの法律を守らなければ、罰則があります。反則では、25,000ユーロ(約295万円)までの罰金が掛けられます。

世界で一番ペットが幸せな街~ベルリンのように

Tierheim ドイツ・ベルリンには、ヨーロッパ最大の保護施設
「※ティアハイム=動物の家」(1901年創立)があり、スタッフの多くは、ボランティアで運営されています。獣医や専門のトレーナーも常勤しています。

 年間5億円以上の経費も市民や企業の寄付で運営されています。犬たちには、冷暖房完備の清潔な個室があります。里親の譲度も二度と不幸にならないよう大切に飼ってもらえる人かどうか、厳しい審査があります。
※ティアハイム=動物の家には、犬・猫に限らず、馬や鳥、豚・ウサギ・蛇など、様々な種類の動物たちが、保護され暮らしています。動物たちに滞在の期限はありません。

Deutschland3-vert ベルリンでは犬税があり、犬一頭につき、月に10ユ一口 (約1,000円)二頭目以降は、一頭あたり15ユーロ (約1,500円)を納めなければいけません。また、ヨーロッパ最大のドッグラン (広さ80Oヘクタール=上野公園15個分)もあります。ベルリン市内には、犬の学校が50校以上あり、ほとんどの飼い主さんは、犬を飼い始めると生後8週齢から生後1歳半くらいまで、自分に合った犬の学校に通います。

 また、しつけやマナーもできているので、公共のバスや電車も子ども料金を払えば、犬も利用できます。  お店・レストランも半分くらいの数は、同伴が許されています。その分、飼い主さんたちは、他人に迷惑を掛けないよう十分配慮し、犬を飼っている人もいない人もお互いに尊重し合っているそうです。

 2006年のゲッテインゲン大学の調べによると、犬業界 (犬にまつわるすべての産業を含む)は年間50億ユーロの売り上げがあり、それに伴う就労者は10万人いるとのことです。

 犬は人の良き伴侶というだけでなく、人と人との関係も良くするので、セラピ一犬としても扱われ、精神カウンセリング、エルゴ治療法、理学療法、言語障害の治療、自然治療法にも使われています。そして更に、犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて、高血圧が少ない、コレステロールの値が良い、心臓発作で生き残れる確率が高い。また、何らかの動物を飼っている人は心筋梗塞のリスクが3%減る、動物療法を取り入れている老人ホームは、取り入れていない所よりも、薬の量が20%少ない、などの研究結果が報告されています。

 犬は人間の健康を助けているという点から見れば、国民の年間医療費 2,400億ユーロ(2003年)のうちの0,875%、約21億ユーロを削減できる役割を果たしています。

 私たちも、少しずつでも、ドイツ・ベルリンのように、まずは「人と犬が生涯共に幸せに暮らせる京都の街」を目指し、創意工夫し活動を行っていきます。